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booklog: ファシリテーション入門[第二版]

Book8 min read

First

いつもはたいていローカルに読んだ本の感想をノートに書くにとどめるんですが たまには書いてみます.

最近はソフトウェアエンジニアしつつ,スクラムマスターしつつという感じで働いているのですが, そうなってくるとファシリテーション技術からはどうも逃げられないようで.
もともと喋るのがまったくだめなので,なんとか武装していかないと・・と考えて最近は こういう本をよく読んでいます.

ファシリテーション入門〈第2版〉 (日経文庫) 堀 公俊 https://www.amazon.co.jp/dp/4532113989

アジャイルの文脈では,チームの自己組織化を促し,作るものに対して開発チームが責任を持つという のがあるべき道なわけですが,そうなってくるとチーム内でいかにものごとを決めていくか が非常に重要になってきます.
社会人はだいたい,会議とかしてものごとを決めていくわけですが,そうするとファシリテーションの出番になるわけです.

ファシリテーションとはなにか

引用になりますが,本書によるとファシリテーション(facilitation)の定義,語源は次のようになるようです(P.23).

ファシリテーション(facilitation)を一言でいえば、「集団による知的相互作用を促進する働き」のことです。
 facilitationの接頭辞であるfacilはラテン語でeasyを意味します。「容易にする」「円滑にする」「スムーズに運ばせる」というのが英語の原意です。
人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶようにするのがファシリテーションなのです。

ここで明確になってるように,ファシリテータ(ファシリテーションを行う人,つまり活動を支援する人ですね)は たとえば会議体においてなにかを決めるとかアイデアを出す人ではありません.
そういうコンテンツではなく,集まったメンバによる会議体を支援しアウトプットの価値を高めるためのプロセスの 舵取りをする人です.
本書ではファシリテータのリーダシップとして,支援型リーダの役割を次のように説明しています.

リーダーの役割は、自律分散(ネットワーク)型組織をつくり,自発的な活動を促進する支援型のリーダーシップに比重が置かれることになります。
環境変化に応じて、人やチームが持つ調節制御のネットワークを柔軟に組み替えていく。メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮できる場をつくっていく。
そんな黒子(演出家)的なリーダーが必要なのです。

どっかで見たことありますね.そう,スクラムガイドでいうところのスクラムマスタそのものです.

チーム活動の場のデザイン

スクラムマスタの必要なスキルは多岐にわたりますが,本書では(当然ながら)いかに人々の協働の場を デザインし,プロセスさせていくかを分析しています.(というか,勝手にアジャイルに結びつけていますが, 本書中ではアジャイル的な文脈は一切出てきません)

チーム活動の場をデザインするのに考慮すべき点を 5 つ挙げられています.

  • 狙い(目的)
  • ゴール(目標)
  • プロセス(手順)
  • ルール(規範)
  • メンバー(役割分担)

協働の場,時間は限られているため,タイムボックス内で成果を出すためにそれぞれ考慮しなければならない点や あらかじめ設計しておく点,周知が必要なものなどがあります.
これらについては,最低限ファシリテータのなかでこれといった理解が確立していて, なお,チームに説明・了解されていることが重要です.

個人的に面白いなと思ったのは,上記のすべてがスクラムロールや原則に現れる概念にマッピングが可能だというところでした.

7 つのプロセスデザイン

チーム活動の場における進め方(プロセス)について,たとえば会議体で扱いたい問題や話題に応じた 形(カタ)のようなものが 7 つ紹介されています.

これらはすべて 問い があって,それに対するチームのアウトプットをいかに効率的に出していくか を実践していく際に役立ちそうです.じっさい,一読して「あーなるほどなぁー」となりましたが, まったく知らなかった!というより,漠然と思っていたことについて整理される感覚に近かったです.

実践に向けたマインド

本書後半では,いかにメンバから引き出すか(対人スキル),いかにアウトプットを整理するか(ロジックの整理) といったやや実践的な内容に踏み込んでいきます.

とくに 5 章 構造化のスキル――かみ合わせ,整理する1 意見のロジックを整理する(P.126~) では メンバの意見をいかに整理して共通認識可能な言葉に落としていくかについて具体的な例がいくつか挙げられていますが, なかなか鋭い切り返しが掲載されていて,ファシリテータに要求されるスキルの高さを実感できます.

また,白板を用いたファシリテーション・グラフィックやビジネスフレームワーク活用なども紹介されていました.
会議体の最後で会議体自体のふりかえりについてもふれられていました.手法としては チェックアウト KPT の 2 つ が挙げられていました.なんだかんだで僕もふだんは KPT を使うことが一番多いので妥当な感じです.

Conclusion

本書はファシリテーションでググって出てきた日本ファシリテーション協会というところで,参考書籍にあがっていたので 興味をもって読んでみたものです.

https://www.faj.or.jp/facilitation/

ファシリテーションについてよくよく考えなおすには網羅的にまとまっている一冊だなぁと思って, こんなエントリを書いてみました.